愉快な散歩或いは読書

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<<   作成日時 : 2012/02/05 22:22   >>

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顔が耳のあいだにはさまってるんだ
                  安部公房




西鶴のアノ有名な辞世の句と共に、遺作の幾つかを出したのは団水である。コノ時代の出版事情と師弟関係は如何なるものだつたのか。団水については其の序文を読むくらいで何も知らない。そして、棚から西鶴集を出してみるが判らないことも多い。けれど判らないから面白く勝手に想像を加へる。老人になつて知つたことは本を読む愉しみは不真面目な読書と云ふことである。西鶴と共に荷風もまたソレに値するだらう。いつか何処かに書いた気もするが Piaget を読んで鮮烈な印象が残つてゐるのが考へる脳が頭のなかにはないと思つてゐる子供の話だつた。僕もさう考へやうと思ふのだ。しかし、脳の其れも為せるもので逃れることは出来ないか。書店を覘くと小説の棚は恋愛小説ばかりで退屈である。書名も新鮮味がなく老人向きではないやうである。故に古い本ばかりを読み始めることになる。もつとも殆どが忘れてゐるので新しい小説と同じであり且何かがあるのは知つてゐるので其れを確認したいだけかもしれない。今夜は居酒屋を読んでゐる。

或る人のブログで Mikael Engström の小説を紹介してゐる。主人公は十二歳の少年である。其れは今年の映画でもある。父親はアルコール中毒。You Tube で見ると面白さうである。面白いのは小説なのか映画なのか。溶けない氷は酒の非現実であり冷たい水は奇想天外な日々だらうか。居酒屋の Zola の描く世界は或る歴史である。Engström の描くのも今日の少年の歴史つまり物語である。斯様なことを思ひ原題を如何に訳すべきかと考へる。少年の世界は脳で考へては面白くないだらう。Gervaise avait attendu Lantier jusqu'à deux heures du matin.で始まる小説の舞台は巴里である。二人の男と女の物語。小説には序文がある。作家は巴里の労働者の家族の物語として Rougon-Macquart の一冊であることや此れからの予定を書いてゐる。暴力と酒と労働そして死。其れでも詰らぬいまの恋愛小説を読むより確かである。少し前に田辺聖子の本を続けて読んでゐて岸本水府について書いた本のなかに狂句と云ふ言葉が出てくる。特別の言葉ではないけれど川柳のなかの狂句は或る意味特殊であることも面白かつたことがある。其処で Engström の小説を水府と翻訳すれば・・・無論売れないだらうなあ。

老いらくの戀については書いた。狂雲森春雨を読み東帰を幾度も前後しながら雨の午後を眺めて加藤周一の其れが僕の夢想を繫げる。川田順の死は小説の後であつたけれど偶然川田にとつては最後の歌集となつた東帰を面白く読み奇妙な一致を感じるのは老人の愚だつたかもしれない。しかし・・・小説とは斯様な遊びを誘発するものではないかと僕は考へる。雨のふるさ夜中にしてさめをれば相模の國の片田舎なる。川田と俊子は結婚後関西から國府津へ移る。海側にあつた母の実家から國道を渡つて山側の田園地帯で蛙や鰌を探して遊んだのは幼年の頃である。大人たちの獲物は鯰だつた。昨夜からの雨は続く。雨はエロティックな連想を齎し耳には心地よい声が聴こえる。吾が見しは既に十日も前のこと今日蛇を見て妻のおびゆる。僕が鯰を探すことなく安全地帯を歩いたのはやはり蛇を見たからだつたことを思ひ出した。

最近の若い女性は背が高くなつてゐて声は低いとはテレビの話である。日常の声とオペラ歌手の其れとは異なるだらうが其の声が歌になる理屈は理解もするけれど訝しく思はれるのも事実である。身長と声の高さは比例すると云ふのはテレビの話だつた。さうかもしれないしさうでないかもしれないと思ひつつ prima donnma の幾人かの顔と声が浮んだけれど困つたことに普段の声を僕は誰も知らないのだつた。ならば体重と声は関係するだらうかと横道に逸れてみるが誰も自分の体重は公表しないだらう。そして此処までは序論で本論は照明とオペラのことになる。オペラが大きな発展を遂げたのはさう古いことではない。オペラの発展が照明に左右されたことは岡村喬生が書いてゐる。僕はずつと此のことが気になつてゐて然れば上演は夜或いは室内と云ふことになる。歌とオーケストラと芝居が一体となり上演されたのは何時なのだらうと思ふ。午前中は考へ難いから午後かもつと遅い時間かもしれない。・・・此れは面白い遊びになる。舞台へ。



註 安部公房にミュージカルス 可愛い女があり自身の言及も幾つかあることを記して今回の終りとする。

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